コエンザイムQ10は医薬品でもあった
コエンザイムQ10はサプリメントとして、あるいは化粧品に配合され広く知られています。しかし元々、コエンザイムQ10は医薬品として研究され取り扱われてきた成分です。ここでは医薬品としてのコエンザイムQ10についてご紹介します。
コエンザイムQ10の医薬品としての歴史
コエンザイムQ10はユビキノンとも呼ばれ、人体中の細胞内のミトコンドリアに多く存在する補酵素です。コエンザイムQ10は、ミトコンドリアでエネルギーの産生に関わります。また抗酸化作用があり、細胞の酸化防止に働きかけます。
コエンザイムQ10は、1957年にアメリカのウィスコンシン大学の研究所で発見されました。1958年にはユビキノンとコエンザイムQ10が同じ成分であることが確認されています。その後も研究が続き、1973年に日本でうっ血性心不全治療の医療用医薬品として、世界で初めて認可されました。
1991年には日本で一般用医薬品として、薬局で販売することが認可されました。1990年代に入ると、アメリカをはじめ、多くの国々でコエンザイムQ10がサプリメントとして販売されます。日本では2001年に食品の成分としての利用が認可されています。さらに2004年の化粧品基準の改正に伴い、化粧品に利用することができるようになりました。
医薬品として国内外でのコエンザイムQ10の現状は?
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コエンザイムQ10は日本でうっ血性心不全治療薬として認可されました。うっ血性心不全とは、心臓のポンプ機能が低下し、血液がうまく全身に送られず、血液がうっ血している状態をいいます。
コエンザイムQ10は心疾患に対する有効性が長年の間研究されてきましたが、近年の大規模無作為化比較試験においては、その有効性を示すところには至っていません。心疾患の治療のためのコエンザイムQ10の影響について、現在のところ一致した見解が得られていない状況です。
米国心臓学会/米国心臓協会では、さらに多くの科学的根拠が得られるまでは、コエンザイムQ10を心臓疾患の治療目的で摂取することを推奨していません。心臓疾患以外の疾病に対しても、コエンザイムQ10の有効性について結論を得るためには、今後、さらに多くの研究データが出るのを待つ状態です。
このような理由で、アメリカではコエンザイムQ10は薬剤ではなく、食品として位置づけられています。
日本国内では、1960年代から医薬品としてのコエンザイムQ10の有効性の議論が進められてきましたが、ヒトに対する効果は明確に実証されていません。医薬品として認可された後も、うっ血性心不全の治療薬としての議論は続いています。しかし現在では、医療現場で、うっ血性心不全の治療にコエンザイムQ10が使われることはほとんどないといわれています。
コエンザイムQ10の一般用医薬品
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現在、一般用医薬品としてのコエンザイムQ10はユビデカレノン、あるいはノイキノンという名前で複数の製薬会社から販売されています。ユビデカレノン、ノイキノンは、心筋細胞のミトコンドリアに取り込まれ、酸素を利用する効率を高め、心機能を改善するのが目的の薬です。基礎治療施行中の軽度~中程度のうっ血性心不全症状に適応が認められています。1回10mgを1日3回服用します。
この薬の副作用は下痢、吐き気、食欲減退、胃の不快感などが報告されています。
医薬品とサプリメントの違い
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コエンザイムQ10は医薬品とサプリメントに使われています。医薬品に使用される場合は、製造方法や成分の含有量などが薬機法に基づく基準により厳しく規定され、有効性、並びに安全性が明確にされています。しかしサプリメントなどの健康食品としての製品にはそのような規格、規定がほとんどありません。製品により純度や含有量、添加物などが異なります。このことから医薬品に含まれるのと同じ成分のコエンザイムQ10が含まれていても、サプリメントは食品扱いであるということを認識しておきましょう。コエンザイムQ10は安全性が高いとされていますが、過剰摂取すると健康被害が起きる可能性もあります。
コエンザイムQ10は基本的に食品から摂取するように心がけ、サプリメントや健康食品は、足りない部分を補う補助的なものとして、うまく利用する必要があります。